振袖 金彩修繕
金彩工房の仕事の中でも依頼頻度の多い仕事の一つに修復の仕事があります。この仕事は時代によって用いられた定着剤や箔の種類よってさまざまな経年劣化で変化した金彩仕事をもう一度蘇らせるものです。ただ蘇らせるだけではなく新たな加工方法を施して雰囲気を変えたり、シミの上に金彩加工を施すことで消してしまうなど加工依頼は多種多様です。
金彩には多くの道具や材料を使用するため顔料を用いて柄を足したり色でシミを隠したりなどの依頼もあります。
大まかにはこの仕事には二種類あり
・以前の加工に限りなく近いものに加工する「復元」
・新たな金彩加工を施し汚れや経年劣化を隠してしまう「修繕」
今回の仕事に関しては「修繕」の扱いになります。
真っ黒になっている部分はおそらく銀箔を使用されていた名残だと思いますが、京友禅の金彩に使用される箔には「着色箔」と呼ばれるものがあり、これは銀箔やアルミ箔に染料を着色させたもので、見た目は金箔に見えても素材が銀箔の場合は変色していきます。本来着色箔には焼きどめなどのコーティングが施されているため「ここまで真っ黒になることがあるのか?」「真っ黒な部分とそうでない部分はなぜここまで差が出たんだ?」という疑問が残るのですがここまで経年劣化が進んでいると以前の姿も判然としないです。
上の写真では市松柄の加工を施してあったような雰囲気が残っていますが、下のものでは真っ直ぐに刷毛で描いたような真っ直ぐな金のラインが残っていたりします。
経年劣化に統一性がなく以前の状況を判断するのは難しいため、打ち合わせの末にこのようになりました。
一部写真が欠落していますが、最後に真っ黒に焼けてしまった金線描きを修復して完成となりました。
加工方法は限られますがこれらの修繕は仕立てた状態でも可能だというのが大きなメリットでもあります。金彩の仕事では仕立てた状態での依頼も少なくないため、本仕立てを解いてさらに仕立て直すなどの工程を省いて加工することでコストを大幅に抑えることが可能になります。
金彩の修繕はかなり多くの問題を解決する方法として重宝されております。