黒留袖 修繕
加工された金彩が経年劣化により剥離していくことはよくあります。
半端に剥離している金彩加工は一度剥がしてしまい、新たに金彩加工を施す修繕依頼は年々増えていると感じます。
動画のように劣化してきた金彩はガムテープなどで簡単に除去することができるため、着ている途中でポロポロと剥離してきます。他にも金彩の表面に糊の粘着力が上がってきている場合は箪笥の中に入れて保存している間に打ち合い(折りたたんで触れ合っている生地に柄が移ってしまったりする現象)がついたり、着物に挟んでいる薄紙が金彩にへばりついてしまったという経験をされている方も多いかと思います。
アップしてよく見ると市松柄の上の七宝の摺箔加工も剥離現象は進んでいます。
金彩は着物を仕立てた状態でも多種多様な修繕が可能ですが、仕立て状態だと修繕が非常に難しいのがこの摺箔加工です。伊勢型紙やシルクスクリーンを用いた加工は基本的に生地がフラットな状態でないと難しく、仕立てられている部分の加工では糊を綺麗に入れることができないため他の修繕方法を使います。(仕立てを解いていただき金彩部分を地直し屋さんに完璧に落としてしまえば本来の加工でも修繕は可能です)
マスキングシートを全体に貼り、加工が必要な部分だけをカッターで彫り抜いた後に金加工を施していきます。剥離していた市松は全て除去して新たに加工を、摺箔加工だった七宝には振金による加工を施します。
before
after
このように金彩部分を修繕するだけでもかつての美しさを取り戻すことが可能となります。
厳密には依然と完璧に同じの修繕ではないため、ある意味リメイクに近い形になります。以前とは違う雰囲気を演出することもできるため新たな気持ちで袖を通すこともできるのではないかと思います。
当工房では個人のお客様からも大変多く依頼をいただいているため気兼ねなくお問合せからご連絡ください。