金彩ゴルフヘッド
ゴルフヘッドへの金彩加工 ― 伝統技法を異素材へ応用した挑戦
本制作は、ゴルフヘッドへの金彩加工という新たな試みとして、
株式会社 KENTACK JAPAN 様よりご依頼をいただいた案件です。
本来、京友禅の装飾技法として発展してきた金彩は、主に正絹などの繊維素材に施されるものです。
しかし本件では、金属製のゴルフヘッドという全く異なる素材に対し、伝統の意匠美をどのように定着・再現させるかが大きな課題となりました。

特殊定着剤による京友禅金彩の再現
通常の糊や定着方法では金属面への安定した接着は難しく、
さらに繊細な線表現を施すには高度な粘度調整と定着強度の両立が不可欠です。
ご依頼をいただいた当初、特殊な定着剤の研究は進めていたものの、
京友禅の金線描きのような細く鋭い線表現を、安定して再現できる段階には至っていませんでした。
そこで、望まれる表現を実現するため、
金銀紛の配合比率、金銀粉の粒度、定着剤の濃度、乾燥条件などを一から見直し、
幾度も試作と検証を繰り返しました。
そして約一年に及ぶ試行錯誤の末、
繊細な金線描きを可能にする再現性のある調合比率を確立することができました。

使用技法 ― 金線描きと「水衣」
本作品では、京友禅の代表的な金彩技法である金線描きを用い、
さらに「水衣(みずごろも)」という表現方法を取り入れています。
本制作では、
- 金彩による主線構成
- さらに細い線をフリーハンドで描き足していき密度を上げる
- 線の重なりによる独特の流れを表現
を組み合わせることで、
競技用具でありながら工芸作品としても鑑賞に耐えうる存在感を目指しました。

スポーツ用品からインテリアへ
本件では、単なる装飾ではなく、
使用しない時間も空間を彩る存在としての可能性を想定して加工を施しています。
ゴルフヘッドは本来、実用品です。
しかし、そこに金彩を施すことで、
- 競技の記憶を宿すアートピース
- 空間に品格を与えるインテリアオブジェ
- 企業ブランドを象徴する特別仕様モデル
として、新たな価値を持たせることが可能になります。
異素材への金彩技術提供
田中金彩工芸では、製品販売を主とするのではなく、
金彩技術そのものを提供する加飾パートナーとして活動しております。
布地に限らず、
- 木材
- 紙
- ウレタンや漆塗装された表面
など、さまざまな素材への応用研究を重ねています。
本事例は、伝統技法を現代素材へ展開する一つの到達点です。
今後も、素材や用途にとらわれない金彩表現の可能性を追求してまいります。



